するとホンジョウはいきなりそのマジックペンでチラシの電話番号の上に横線を2本入れ、モトコに向っていきなりこう尋ねる。
モトコの携帯、何番だっけ?」
携帯實德環球?」
と言ってモトコが棒読みでとその番号を告げると、ホンジョウはチラシにその番号を丁寧にマジックで書き込み、得意げな表情でこう続けた。

これでよしと。
ちょっとみんな聴いてもらえるかなああマスター、そこなんだけどさあ、最近ちょっと俺が通ってる店でね。
雰囲気的には今っぽい感じなんだけど、なんか70年代のスナックをイメージに演出してるバーでさあ。
これがまたけっこういけてるんだよ」
とホンジョウもすかさずそうフォローに入る。

先代のママが持ってたお店を譲ってもらったんです。
彼女そこでずっとスナックやってたもんで、それをベースにちょっと今風にアレンジしてもらったんですよ。
その感じがどうも昭和系のおじさんたちに受けがいいみたいで」

そうだよなあ、俺たちなんかもうクラブとか???、新しい感じの店とかなんてなんとなく落ち着かないもんな證券行開戶?」
とマスターも納得したようにそう応える。

それでさあ、マスター聴いてよ。
俺がしょっちゅうその店通ってボトル入れたりしてるのにさあ、この間たまたまそこにナカバヤシを連れてったら、コイツひと目で気に入っちゃったらしくてさあ。
ナカバヤシさんに会いたい、会いたいって???って、もうそんなことばっか言ってんだよ」

ナカバヤシ?
そ、そうなの?

まあ、アイツもいいオトコだけど、俺はホンジョウをお勧めするけど」
とマスターはいつものいい加減な口調で適当にフォローを入れてくる。

ナカバヤシなんてその日はもうすげえ泥酔でさあ。
そう、あれは確かアイツが俺に今の会社の立ち上げの話を初めて持ってきた日だよ。
アイツ、モトコの店に行ったのすら憶えてなかったんだぜ」
とホンジョウはさっきからずっとぼやきっぱなした。

だってしょうがないじゃない。
タイプはタイプなんだから」
とモトコは開き直ったようにそう応える。

まったくもって商売っけがないって言うか、俺には全然なついてこないんだよ、このオンナ」
とホンジョウはさらにだめ押しでぼやく。

そこまで言われちゃあオマエ、だんどってやるてえのが義理ってもんじゃないの實德
ホンジョウくん?」
とマスターは早くもそっちの味方かよ?と言った具合だ。