把握してないんですか?理事長って一体何に興味あるんです?」
心底不思議層に問われたが、ザンは苦々しい表情をする。
理事長はやめ皮膚分析ろ」
はい。なんて呼べば?」
ザンだ。」
ザン?」
友人がつけたあだ名だ。何故かここでも浸透している」
なるほど。了解しました」
敬語も必要ない。もう雇用主ではないからな」
そうですね。うん、分かった。年も近いしね!」
そういうことだ」
ザンは頷きビールを飲みつつ、まだ何か言い合っている美桜里と貴彰を見た。
でさ、あの4人は誰かと誰かがつき合ってるの?」
今聞いた限りではないらしい」
それは私も聞いてたからわかるよぉ。じゃなくて、なんかこう恋愛ドラマちっくな展開があるのかなーって思って!」
恋愛ドラマちっく?」
訝しげな表情で反芻したザンを見て、美波は話にならない、といった表情でため息を付いた。
恋愛ドラマちっくねぇ。美波ちゃんは彼撫平皺紋氏はいないのかい?」
二人の会話を聞いていた栄太がこちらの会話に割って入った。
いないですよぉ。いたら一人でこっちに来ません」
それもそうだな。」
私、25までに結婚するのが目標なんです!」
突然あっけらかんと言い放った美波の言葉に、全員やや驚いた表情をした。
変ですか?」
キョトンと首を傾げる小動物のような表情に、早雪は顔をほころばせた。
ううん。変じゃないけど、東京の子にしては早いなって思って」
晩婚化が進んでるしね。それに、この村に来たら相手を捜すのは大変だぞ?大丈夫かい?同世代の男はそう多くない。だよな?」
そうね。いるにはいるけど、早くに結婚した人が多いし、残っているのは少ないかなぁ。でも良さげな人いたら紹介するからね!」
美桜里が言うと、美波は目を輝かせて美桜里の両手を握った。
是非!お願いします!大人で優しくて、お腹が出てない人がいいです!」
その言い方が可笑しくて、早雪と貴彰が笑う。
あら、じゃあここにいる男性陣はみんな合格じゃない?」
美桜里が見回すと、貴彰と栄太、ザンは驚いた顔をしてお互いを見た。
そうなんですか?ちょーっと、失礼!」
美波は含み笑いをしながら隣の栄太の腹をつかもうとした。
おいおい、生憎、つかめる肉はまだついていないよ?」
本当だ~!栄太さん、合活力精油 格~!」
私もまだなんとか」
自己申告した貴彰の腹部もチェックした美波はにっこり笑う。どうやら合格のようだった。
でも一番はザンよね?」
美桜里がからかうようにザンの顔を覗き込み、予告なしに突然腹にグーでパンチをする。
顔色一つかえず美桜里を見下ろすザン。